Interview

●まずは中野さんとPeople In The Box(以下People)との出会いをお聞きしたいんですが。
中野:元々インディーズ時代の音源を聴いて、気になっていたんです。それでたまたま彼らがメジャーデビューするタイミングで、『音楽と人』(雑誌)の人から「今度取材するんだけど、知ってる?」って訊かれた時に「メチャクチャ知ってますよ」っていう話をして。そこからバンド名が“People In The Box”ということでストレートに「箱の中にメンバーを入れて撮りたい」っていうアイデアを出したら撮影が決まって、その取材で撮らせてもらったのが一番最初ですね。
●雑誌用の撮影が最初の出会いだった。
中野:その後でまた『音楽と人』で密着取材をしていた時に、僕がツアー先の新潟までライブの撮影に行ったんです(※3rdミニアルバム『Ghost Apple』リリースツアー、2009/11/18@新潟CLUB RIVERST)。彼らは当時、次作の『Sky Mouth』(1stシングル/2010年2月)用の曲作りをそのツアー中にすることになっていたらしくて、リハーサルが終わった後の空き時間で曲を作っていたんですよ。
●ツアー中の裏側まで見ている(笑)。
中野:だから彼らの独特な曲作りの方法も垣間見ることができて、良い意味で“こいつら、アホな作り方をしているな”と思ったんですよ。(曲作りに)インプロヴィゼーション(※即興演奏)の要素もあるのがすごいなと思って。その後で『Sky Mouth』のアー写を撮ることになって、できあがった音源を聴かせてもらったら、ツアー中に聴いたものよりもすごく進化していたんです。もちろん良くなっていたし、「カッコ良いな。あのイントロがこうなったんだ」とか思って、すごく楽しかった記憶がありますね。
●作曲の過程を見ているからこその楽しさというか。ちなみに中野さんは元々Peopleの音源を聴いていたということは、個人的にも好きなタイプの音楽だったんでしょうか?
中野:もうドンピシャで好きなタイプです。ツアーの時も撮っている人たちのことを好きだなと思ったら、僕はバックステージとかも平気でウロウロしちゃうんですよ(笑)。あるライブのアンコールでは、彼らの中でもまだ何をやるのか決まってなくて。何曲かある候補の中からメンバーが「これとこれのどっちをやろうか?」と話し合っている時に、僕が「こっちをやって!」とお願いしたこともあります(笑)。
●本当に好きなんですね(笑)。
中野:今でもすごく覚えていることが1つあって、新潟でのライブの時に僕がわざわざ来ているから、普段はやらないであろうフロントマン独特の“キメ”みたいなものをライブ中にやってくれたんですよ。波多野くん自身は「そんなことしてない!」と言っていたんですけど(笑)、それを見て「すごくサービス精神が旺盛な人なんだな」と思って。そこから“このバンドが好きだ”と思いましたね。
●撮っている側への気遣いも感じられた。
中野:本当に近い距離で撮っている中で、良いタイミングで“キメ”てくれたり、撮りやすいようにしてくれたのがすごいなと思って。その時撮っていたのが“ドキュメント”するタイプの写真だったのも良かったんだと思います。ただライブがあったことを報告するためだけの写真ではなくて、その人の息遣いを感じながらの撮影だったので、そういうところが如実にわかったんでしょうね。
●アーティスト写真を撮影する時も、そういった息遣いを読み取っているんでしょうか?
中野:Peopleの場合は、3人のバランスがその時によって違うんですよ。だから“誰が”というよりは、“バンド”として今はどういうムードなのかを知ることで、アー写に対する取り組み方も変わるという感じですね。
●時期によって、メンバー3人のバランスが違うんですね。
中野:毎回違いますね。バンドって、良い意味でも悪い意味でも“パワーバランス”があると思うんですよ。そのパワーバランスをどういう部分で感じさせるかというところで、お客さんが見た時にもバンドのモードが伝わると思うんです。それを常にこちら側からヒアリングして、“こういう写真にしたい”というものを撮るようにしていますね。
●最初に撮った『Sky Mouth』の時は、どういう要望があったんですか?
中野:その時はメジャーで初めての作品だったし、前所属事務所から「とにかくイケメン風に撮って欲しい」というリクエストがあって。当時はまだ本人たちも自分たちがどうしたいかというのをそんなに出していなかったし、どうしたら良いのかもよくわかっていなかったと思うんですよ。この時に波多野くんと僕がモメて、この次の写真は撮ってないんですけど…(笑)。
●モメたんですね…(笑)。
中野:「もっとこういうイメージにして欲しい」っていう主張が、波多野くんにはあって。そこから彼らとしても「これは自分たちで何とかしないといけないんじゃないか」と思うようになったんでしょうね。いったん離れた後でしばらくして、メンバーから「こういうことをしたいんですけど、相談に乗ってくれませんか?」っていう依頼があったんです。それで次に撮ったのが、バーベキューの写真なんですよ(※2ndシングル『Lovely Taboos』/2011年10月時のアーティスト写真)。
●『Sky Mouth』の時と比べると、一気に雰囲気が変わりましたよね。
中野:メンバーの思いをざっくりと汲み取るなら、“自分たちじゃないものになろうとするのをもうやめたい”っていうことだったと思うんですよ。“自分たちが楽しい環境で音楽をやっている状況で撮りたい”ということで。
●それがバーベキューだったと。
中野:波多野くんの中では元々、僕の写真については独特な色感があって、何らかのフィルターが掛かっていると感じていたみたいなんです。それでメンバーから「中野さんだったら僕らがバーベキューしている写真を撮っても、フィルターが入るので“ただのバーベキューの写真”にはならないと思う」っていうことで相談があったんですよ。そこから「バーベキューできる場所を探そう」という話になって、あの写真を撮りました。
●バーベキューというアイデアを聞いた時は、どう感じました?
中野:“メンバー自身がちゃんとそこまで振り切れるんだ!”と思ったし、面白かったですね。この時はメンバーから「自分たちの顔の見え方はあまり気にしないから、中野さんの好きなように撮って」と言われていたので、シュールさを出すためにスモークを焚いてみたりもして、楽しかったんですよ。最終的にはメンバーとも「楽しそうな空気感が伝わる写真が撮れて良かったよね」という話になりました。
●『Sky Mouth』の時にモメたことは、わだかまりにはなっていなかったんでしょうか?
中野:わだかまりはなかったですね。『Sky Mouth』の後に“空から降ってくる vol.2”(2010/10/17@日比谷野外大音楽堂)を観に行ったら、もう涙が出るくらい良かったんですよ。彼らの成長がすごく見られたライブでもあって。それで“もう好きなようにやって良いよ。こんなにカッコ良い音楽を作っているヤツらの言うことなら何でも聞いてあげるよ”っていうモードになった感じはあります。
●『Lovely Taboos』以降はメンバーの意志を汲み取りつつ、撮影している?
中野:3人に今回はどういうふうにしたいかを訊いて、それに対して僕が「じゃあ、こういうことしたら面白いんじゃないか?」っていう感じでアイデアを出していきます。本人たちがそのアイデアに乗ったら、撮影していくという感じですね。
●その後に囲炉裡を囲んで撮った『Ave Materia』(3rdフルアルバム/2012年11月)時のアー写や、浴衣を着て卓球をしている『Weather Report』(4thフルアルバム/2013年10月)時のアー写が続くわけですが、これらは『Lovely Taboos』からの延長線上というか。
中野:本当に延長線上ですね。『Weather Report』の時になぜ卓球にしたのかはよく覚えていないんですけど、大ちゃん(※Dr.山口大吾)が「浴衣を着たい」と言っていた気はします。確か、“温泉…卓球”みたいなキーワードが出てきたんじゃないかな。
中野敬久
Photogrpher
中野敬久
Hirohisa Nakano
1993年渡英。1999年東京にてフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。雑誌のファッションストーリーからCDジャケット、広告など幅広く活動中

HP:www.hirohisanakano.com