Interview

●そういったキーワードから、あの写真になったと。『Wall, Window』(5thフルアルバム/2014年8月)はどういうコンセプトだったんですか?
中野:たぶん映像系のイメージが本人たちにあったのかもしれないですけど、「映画館で撮りたい」とは言っていましたね。どの写真もシュールなネタ出しは、メンバーと一緒にしていくんですよ。この時も「“パーン!”ってなっている要素を3人で出すにはどうしたら良いか?」という話になったので、「じゃあ、映画のシーンに驚いてポップコーンが弾けている感じはどう?」というアイデアを出して。そこからメンバーに驚いた顔をしてもらって撮っていった感じです。
●ポップコーンが弾けるというのは、中野さんのアイデアだった。
中野:この写真では3人それぞれに違う色のポップコーンを持っているんですけど、これは僕が美術として仕込んだんですよ。実はよく見るとポップコーン自体の色と入れ物の色を合わせていて。入れ物も自分で買ってきて色を塗って、ポップコーンにも食紅で色を付けて全部準備したんです。その作業を1週間がかりでやりました(笑)。
●ちゃんと手間暇をかけている(笑)。
中野:それを見た瞬間、本人たちもきっと笑うじゃないですか。そこにもう既に1つの“着地点”ができているというのはありますね。
●こういう写真だと一瞬の表情を捉えないといけない上に、3人とも良い顔をする瞬間を押さえるというのがなかなか難しそうな気がします。
中野:難しいですけど、バンドなのでそこは上手くグルーヴを合わせてもらって(笑)。結構撮った中でも、この写真のグルーヴが一番良かったですね。途中で撮った写真を見て大ちゃんが「これだったら俺はメガネをズラしたほうが良いですね」とか、そういう古典的な技も使っていたりします(笑)。
●そんな中で『Talky Organs』(5thミニアルバム/2015年9月)のアー写では、急に真面目になった感じがするんですが…。
中野:(これまでのアー写に対して)「こういうことをすることによって、音楽に対するフィルターがかかっているんじゃないか? “言っていることとやっていることが違う”と思われたりして、逆にわかりづらくさせているんじゃないか?」という本人たちの意見があって。それで「シンプルなポートレートを撮って欲しい」と言われたので、こういう写真になりました。
●他に何か要望はあったんですか?
中野:「1人1人の顔がわかるようにして欲しい」とは言われていましたね。本人たちに「これが良い」と思うものをその場で選んでもらって。2人を先に撮った後で3人目が大ちゃんだったと思うんですけど、「2人がこういう感じだったら、僕はもうちょっとこういう感じで撮りたい」というようなディスカッションもありました。
●そこも3人のバランスを考えているんですね。長い付き合いの中で、そのバランスに変化も感じていたりする?
中野:より完成形になってきた気はします。3人が3人とも主張するようになったというのは、僕の実感としてありますね。
●健太くん(Ba.福井健太)も何か主張するんですか?
中野:実は話に気が乗っていない時って、健ちゃんが一番嫌な顔をするんですよ。積極的に意見を言ってくるのは他の2人なんですけど、健ちゃんの顔色もちゃんとうかがっておかないといけなくて。彼の納得しない方向に話が進んでいる時は嫌な顔をしているし、だんだん心がなくなっていくんです(笑)。そこは気を遣いながら、巻き込むというやり方をしていますね。
●それは初期から気付いていた?
中野:最初から気付いてましたね。『Sky Mouth』のアー写を撮っている時も、意外と細かく気にするのは健ちゃんだったりしたから。当時のスタッフと「意外と健ちゃんが気にしているよね」という話をした記憶もあります。
●被写体の感情を読み取るというのは、他のアー写撮影をする時にも気を配っていることなんでしょうか?
中野:3ピースバンドの場合はたとえば“フロントマンは前にいて、その後ろに2人”みたいな見え方やバランスをあらかじめ知っておかないと、地雷を踏んでしまうこともあるから。そこは気を付けていますね。バンドによって、そういうバランスはそれぞれ違うんですよ。バンドとしての成り立ちの違いもあるし、「アウトプットは誰からなのか? バンド全体なのか?」っていうところでも全然違っていて。
●バンド内のバランスや空気感をちゃんと読み取った上で、毎回撮影しているんですね。
中野:たとえば同じように音楽に関わっているエンジニアさんとかも、基本的にそういうやり方じゃないとできないと思うんですよね。どんな音でもボーカルだけを前に出すわけじゃなくて、「みんなの鳴らしてる音を良いバランスで出しつつ、こういう時はちゃんとボーカルを前に出す」みたいなバランス感覚でやっていると思うから。僕も心がけとして、そういうふうに撮りたいなとは思っています。
●インディーズ時代の音源も聴いていたというお話も最初にありましたが、中野さんの場合は「音楽が好きで、People In The Boxの音楽も好き」というところも大きいのかなと思いました。
中野:People In The Boxに関しては、特にそうですね。みんなと音楽の話が細かくできるから楽しいというのはあります。
●ルーツ的な部分で何か通じるものもあったりするんでしょうか?
中野:メロディのある音楽が好きなので、「そのへんは通じているよね」っていう話はメンバーとしたことがあって。僕が好きなPrefab Sproutとかは、波多野くんと趣味が合いますね。あと、The Smithsも彼は好きじゃないですか。そういう“茨な少年”的なイメージのあるアーティストを外さないところは、すごくわかるなと思います。
●では最後に、今回の『Things Discovered』を聴いてみた印象はいかがでしたか?
中野:ライブにどんどん近付いてきている感じはするかな。新録とはいえども、意外とライブアレンジに近いなという感じがしていて。この前、久々にライブを観た時にもプレイアビリティが上がっているのを感じたんですけど、それをそのままギュッと作品に込めたいっていう気持ちなのかなと思いました。
●ずっと聴いてきた中野さんから見て、ベスト盤的なDISC-2の楽曲セレクトで「これは入れて欲しかった」みたいなものはない?
中野:今回リマスタリングしてるとはいえ、これまでの音源を持っているから別に大丈夫です(笑)。
●全部持っているから、関係ないと(笑)。
中野:そうですね。大丈夫です(笑)。
Interview:IMAI
Photo by Hirohisa Nakano
中野敬久
Photogrpher
中野敬久
Hirohisa Nakano
1993年渡英。1999年東京にてフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。雑誌のファッションストーリーからCDジャケット、広告など幅広く活動中

HP:www.hirohisanakano.com