Interview

●色加工もしているんですね。
岡田:色に関しては、必ず僕のほうで調整していて。波多野くんの中には洋書みたいなイメージがあったので日本のトーンよりも少し強くして、色を引き立たせるようにしていますね。でも実はそれって、波多野くんの心境の変化と共に変わってきている気がするんです。
●というのは?
岡田:卵の時(※1stシングル『Sky Mouth』/2010年2月)くらいまではソリッドにしていたんですけど、馬の時(※3rdシングル『Lost Tapes』/2012年8月)くらいから少しずつトーンを柔らかくしていて。『Bird Hotel』や『Ghost Apple』の時って、波多野くん自身も今よりトガッていたと思うんですよ。でもやっぱり年と共になのか、バンドの年輪と共になのか、あの時のPeopleの荒々しさというのが感覚や人間的な部分も含めて良い意味で変わっていったのかなと思っているんですよね。
●その変化をジャケットに反映している。
岡田:僕の芯としては、音楽をやっている時のPeopleよりも、普段会う“素”のPeopleの状態で色を調整している感じがあって。はっきり言えば波多野くんとのやりとりでの直感なんですけど、そこは意識しています。でもこういう話を本人には、一切したことがないんですよ。『Rabbit Hole』の頃から僕の仕事の進め方を見てくれていて、そこは安心してくれているのか、基本的にまずは何も言わずに任せてくれているんだと思いますね。
●お互いへの信頼感があるからこそでしょうね。
岡田:すごくメンバーを信頼しているし、彼らの音も信頼しているから、僕も下手なことはできないんですよね。そういう意味では『Family Record』(2ndフルアルバム/2010年10月)は真っ白なジャケットを作ったんですけど、あの時はちょっと精神を削られましたね…。
●それは何が原因で?
岡田:Peopleがとんでもないアルバムを作ったなと思ったので、ジャケットも負けていられないなというのがあって。しかも、テーマが“白”っていう。真っ白な中にトルソーがあるっていう写真なんですけど、あれはLéonと話して決めたんですよね。「街にいるのは人間だけど、そこには魂のこもっていないような人間もいて…」というところで、トルソーを使って写真を撮ることにしたんです。そういうところも複雑だし、白い色を表現するのってすごく難しいんですよ。
●確かに、白は印刷する時も難しいですよね。
岡田:色校正でも、良い白が出るようにすごく気を遣って。加藤隆さんのPV(「旧市街」)もすごかったし、できあがった音やスタッフ陣の熱意もすごかったから。そういうのも含めて、すごく印象的だった作品ですね。…これだけ語っておいて何なんですけど、僕らが3者で作っている作品に関して、お客さんは好きに判断してもらって良いと思っているんです。写真集に対する考え方って、人それぞれじゃないですか。たとえば写真に写っている人に対して、“これはどういう人なんだろう?”という感じでストーリーを考えたりもして。それと同じで、ジャケットを見て勝手にストーリーを作ってもらえば良いなと思います。
●自分たちの想いとは別に、受け取り手には自由に解釈して欲しい。
岡田:実は僕の中では“3”に少しだけこだわっていて、それにまつわるものがブックレットや盤面にも潜ませてあったりするんです。そういう僕の中での遊び心はメンバーにもいちいち説明していないんですけど昔からちゃっかり入れているので、細かいところまで見てもらえるとすごく面白いと思います。
●遊び心が随所に潜んでいるわけですね。
岡田:そういう意味でも『Rabbit Hole』の時は良くも悪くも、力んでいたんでしょうね。でもその次(『Frog Queen』)にキリンのジャケットにした時点で、肩の力が抜けたんですよ。「面白いね。この感じで行こうよ」となって。1枚目が悪いとかじゃなくて、当時は当時のスタッフ含め、みんなが色々初体験で前のめりな部分もあったと思うんです、そこにメンバーは違和感を感じていたんだと思います。2枚目からはメンバーとLéonと僕の3者になったのもあって、すごくやりやすくなりました。
●お互いへの理解度も、作品を重ねるごとに深まっているのでは?
岡田:そこは変わらないですね。今でもメンバーに対する“好きさ”だったり理解度というのはずっと同じかな。パーソナルな部分ではもちろん深まっていますけど、People In The Boxの作品を作る上での距離感というのは基本的に変わっていなくて。お互いに甘えもないから。
●惰性になることなく、緊張感を持って毎回やれている。
岡田:緊張感はないんですけど、向き合い方は変わらないっていうか。僕自身は、すごくポップな人間だから。そこがPeopleの音楽性とは一番違うところかもしれないんですけど、僕はものすごくポジティブだし、楽しんじゃっているんですよね。自分自身にとっても、作品を1つ増やせるという喜びがあるんですよ。だからPeopleから(ジャケット制作依頼の)話が来るのを「待っていました!」という感じなんです。そのために彼らの曲ができるのを待っているっていう…そこはファンと一緒かもしれない(笑)。「やった! これでもう1作品、Peopleと一緒に作れる」っていう、これが一番正直な気持ちですね。
●一緒に作品を作ることが楽しみなんですね。
岡田:やっぱり特別ですよね。僕も「これは自分の作品だ」って言えますから。音とは違った次元で、1つの作品だと思っているかもしれない。僕の人生で一番好きな作品を毎回Peopleが更新していくので、アーティストに偏ってはいけない職業ではありますけど、やっぱり“岡田”っていう人間のパーソナルな部分もここに出る。そういう意味で、やっぱり“Peopleとじゃないと…”っていうのはありますね。完全にPeopleと、そして、Léonと僕が一緒に作品を作っているんだなというのは、今日話していて気付きました。
●その3者の関係性が大きい。
岡田:こういう形でずっと携われていることが本当に嬉しいし、光栄だと思っています。できれば一生、一緒にやりたいですね。Peopleが続く限りずっと…
●並べると壮観でしょうね…!
岡田:やっぱりPeopleの作品は飾られ映えするので、お店でも面出しされるんですよね。新譜が出た時には必ず過去の作品も一緒に並べられるわけですけど、どの作品と並んでも全部が良い画になっていて。10年前に話した理想の形に今なっているというのは、とても素敵なことだなと思います。
Interview:IMAI
岡田 考功
Art Director
岡田 考功
Yoshinori Okada
浦和生まれ。INVESTORS CLOUD inc. にて クリエイティヴ・メディア事業部『FIRSTORDER』設立・主宰。音楽、スポーツ、ファッションなど、幅広いジャンルのクリエイティブを手がけ、 キャスティングやPR、企画のプロデュースも行う。雑誌 BARFOUT! にて「コノゴロコミック」隔月連載、OCEANS で「#TATERUガールズ」連載中。

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