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波多野「話変わって、downyの新譜《第六作品集『無題』》の話もしたいんですけど。ひとつ前の《第五作品集『無題』》って、語幣があるかもしれないですけど、ちょっと集大成的な感じがありましたよね?」
青木「結果的にそうなったよね」
波多野「僕がいつもびっくりするのは、downyの1枚目から4枚目までの一切のブレのなさと、矛盾するくらいの変化の早さ。あの4年間の中で、あれだけの音楽的変化があったってことって、案外見過ごされていると思ってて」
青木「そうだよね。一年に一枚のペースで出してたからね(笑)」
波多野「で、2013年にリリースされた5枚目で、4枚目までが一気にまとめられて、かつアップデートされてきたっていう。そこで一旦完成されたように見えるんですけど、実は6枚目はそこからさらに進んでいて。そのさらなる進化にはほとんど執念のようなものを感じたんです。勝手な想像ですが、まず動機として、なによりも自分が自分で聴きたいものを欲求している人にこそ到達できた作品な気がしました」
青木「やっぱり音楽を休んだことが、自分の中ですごく大きくて。音楽から離れるってね、すごく一大決心だったけど、休んだおかげでもう一度音楽が好きになれた。沖縄で、のんびり暮らしてさ。夏なんかは毎日子どもと海に行って、車の中ではレッチリを流して盛り上がっているのに、自分が作る曲はdownyなわけ。どっからどうやっても、ああいう曲なわけ。どこに俺のスイッチがあるのかっていうと、単純にリスナーとしての自分、アーティストとして作品を作る自分とが別人格でいる。リスナーの青木ロビンは、コーヒーを飲んでいて流れてきた曲に〈これいいな。誰の曲?〉とか言ってる。だけどアーティストの青木ロビンは、自分が曲を作りたいってことしか考えてないから、わがままというか、〈これをやんないとお客さんに聴いてもらえないかも〉って気持ちを無視しているというかさ」
波多野「6枚目のアルバムを聴いて、それはものすごく感じました」
青木「メンバー全員そんな感じだからね。ここまで来たら、さらに打ち抜くしかないだろうって。6枚目は、〈聴いたことがない作品を作ろう〉ってテーマでやったから、すごくキツかったよ。自分の中では、今までで一番スッと聴かせられることができるアルバムだと思っているんだけど。いびつさはありつつ、シュッとしているというか。でも、みんなが〈downyって難しいな〉って一番感じたアルバムでもあるのかな。〈難しい〉の意味がちょっと違うと思うんだけどさ。テクニックや技術じゃなくて、塊として聴かすための道具というか。自分の中では、今できる最高の状態だと思う」
波多野「あのアルバムは、今までdownyの中でマスキングされていた、ハーモニーとか和声の部分がグッと前に出ましたよね」
青木「そこはすごく意識したね。主軸に歌を置くって初めてやった」

波多野「僕の印象なんですけど、すごくカラフルなアルバムですよね?」
青木「ね! メンバー全員そう思っているんだけどね」
波多野「歌だけじゃなくてハーモニーが多彩で。すごく鮮やかだなと思いました」
青木「みんながしゃべっているよね」
波多野「ああ、そんな感じがします。ビートとハーモニーとが、一体としてしゃべっている感じ。〈親切な球体〉は、びっくりしましたね」
青木「あれは意味わかんないよね(笑)。けど超カッコよくない? スリップビートからスリップさせるっていう、二重スリップだから(笑)」
波多野「そう! しかも二重でビートがスリップした挙句に、歌のキーがスリップしていくでしょ(笑)」
青木「あんなのないし、もっとびっくりしてもらいたいんだけどなあ」
波多野「あれは本当にびっくりしました。だから僕は、そういうときに簡単にひとくくりに変拍子って言うなって、すんごく思います(笑)」
青木「あれはもはや変拍子じゃないしさ」
波多野「そう。ネットの発達で情報が溢れているって言いますけど、それの一番の弊害が、言葉が食傷気味になっていることだと思うんですよね」
青木「ジャンルで分けたりだとかね」
波多野「〈轟音〉とか〈変拍子〉っていう言葉を見聞きしても、べつに聴きたいと思わなくなっちゃったというか。だから、僕は『After Hours』というイベントには、すごく意味があると思っています。薄っぺらい形容を無効にするようなミュージシャンばかりですよね。あれだけのラインナップが集まることって、本当にないですよ」
青木「みんな本当に二つ返事でOKをくれて。だってすごくない? DJ KRUSHさんもいてさ。ぶっ飛んでるよね」
波多野「そうですよね。べつに他が悪いとかじゃなくて、僕が日本で音楽としてすごく好きだなと思える人のほとんどが、集まっているイベントってイメージです」
青木「今回の『After Hours』は、単純に音がカッコいいっていうのは当たり前なんだけど、ちゃんと自分のやり方をインディペンデントで持っている人たちの集まりにしたかった。売れている、売れていないは関係なく、とにかく表現が自由であることを体現していたり、道を自分たちで作ったりしている人たちを集めたかった。さっき波多野くんが言ったみたいに、どこかをディスる気なんて全くなくて、こういうこともできるっていうのを、いい例として残せたらいいなと思って」
波多野「あのラインナップだけで、意思が見えますよね。そこにピープルも誘っていただけて、すごく嬉しいです」
青木「いや、ピープルは絶対でしょ!って話を、主催者みんなでもしたのよ。ピープルって、独特だよね。立ち位置も。いつも波多野くんには言ってるけど、僕は、ピープルをプログレの意識で聴いているからさ。プログレも意味の無い、ただのジャンルじゃん? だってさ、昔の人がイエスを聴いてさ、〈わあ、プログレだ〉って思ってなかったと思うんだよ。あれはポップスだったはずなんだよ、絶対」
波多野「そうそう。それに本人たちも、プログレと思っていないと思いますしね」
青木「でしょ? 表現をしようとしたら、あれになっただけで、あとでプログレだと枠付けされただけだよ。やっているときが一番初々しいわけだしさ」
波多野「音楽のど真ん中にあるものって、作り手の最初のワクワク感みたいなもの、たとえばロビンさんがビートを打ち込みはじめる一瞬前の気持ちとか、僕だとコードをジャランって鳴らしたときの気持ちだと思うんですよ。それがそのまま、お客さんに伝わればいいなって常々思っていて。今は理屈が上滑りしていて、理屈抜きにグッとくる部分がすごく見えづらくなっちゃっている。だからそういうのを大事にしながらやっていきたいなと思っているんです。downyの最新作がいつもフレッシュなのは、そういう根源的なところが伝わってくるからで」
青木「いつも作品に説明書きをつけないといけない感じが嫌じゃない?」
波多野「嫌ですねえ」
青木「聴いてみて、ついて行けなかったんなら、ついて行けなかったって書けばいいじゃん? そういうのを今回は作りたかった。何百年って経ってから評価されるアーティストだっているんだし、それでいいじゃんね? いちいち今はどういうのがウケているから、とか考えていたら、いいものは作れないから。もちろん喰っていくための音楽もあるし、考え方はいろいろあるだろうとは思うけど、downyは、せっかくそことは別の生き方ができているバンドだからさ」
波多野「僕らは僕らで、結構おいしいポジションにいるとは思ってて(笑)。どこにでもいけるっていう強みが、すごくある。だけど僕は、自分たちの意志でそうしようとしたっていう気持ちもとても強くあるんです」
青木「つまり、新しく道を作れてるってことだよね。ピープルに似てるバンドって、いないもんね」
波多野「僕、それが一番言われて嬉しい言葉です(笑)」
青木ロビン
青木ロビン
Robin Aoki
5人編成のロックバンド、downyのVo&Gt。
Dhal、zezecoとしても活動。

http://downy-web.com/